製造業に限らず、トラブルや天災などのイレギュラーが起こった時には日常通りの仕事だけでなく、その火消し対応であったり、関係各所との調整が必要になるものです。
特に生産管理の場合、特にスピーディーな対応が求められます。
なぜなら、社内外の大勢のヒトやモノをコントロールし、
被害を最小に抑えながら、円滑で効率的な供給体制を維持することが
生産管理の仕事の一つだからです。
今回は、天災などのトラブルが起こった場合に
生産管理マンが何のために、どんな仕事をするのかを紹介します。
すでに生産管理の職についている人からすれば
当たり前に感じる内容もあるかもしれません。
生産管理の仕事内容について詳しくない人にとっては
意外に感じる部分もあるかもしれません。
知っている人も知らない人も、急を要する場面に、
少しでも迷わず正確に素早く動けるよう、
役に立つ内容になればと思います。
どんなトラブルがあるのか
生産現場における天災によるトラブルとはどんなことがあるでしょうか。
主な内容は以下のようなものになると思います。
- 地震による稼働停止
- 台風による流通ルートの変更や停止
- 感染ウイルス蔓延
- 生産工場の火事
これらはめったに起きないんじゃないかと
思っている人も多いかもしれませんが
実際に生産管理の立場で仕事をしていると
かなりの頻度で出くわします。
自分の働く工場だけでなく、
得意先や仕入先、さらにその下請けの2次下請けに降りかかれば、
その対応が余儀なくされるのです。
私が実際に体験したケースを紹介します。
例えば、2018年9月に起きた北海道胆振東部地震が起きた際には、
被災した工場に対して、数十人の人がバックアップに行きました。
もちろん、甚大な被害を受けた人々のサポートをするということが
大きな目的の一つではありますが、
何としてでも生産体制を整え、得意先への供給を再開する必要があるのです。
2019年にきた台風15号の際には、
自分の地域の被害はそれほどではなく、ほっとしていると…
仕入先が大変な被害にあっており、”部品の納入がストップしてしまう”
といった事態が起きました。
他にも2020年2月現在、中国で大流行している
新型コロナウイルスの蔓延により、
中国政府が生産工場の稼働停止をするよう声明を出しました。
海外のことであっても、必ず影響は出てきます。
グローバル化が進んできた昨今、安く作れる海外で部品を生産し、
輸入している会社はたくさんあるためです。
これくらい大きな影響力のある社会問題の場合、
得意先からすぐに
「影響のある製品は何か?あるとしたらどの程度の影響か?」
と問い合わせがきます。
問題の程度を迅速に調べ上げ、得意先を安心させるとともに
社内の人員や生産体制への影響度を最小にする必要があるのです。
このように国内外、仕入先、得意先といった
あらゆるパイプラインへの影響度を考慮する必要があるため、
生産管理の仕事をやっている以上、常にアンテナを張り巡らせ
異常に備え、迅速な対応が求められる場面がたくさんあるのです。
生産管理の使命は何か
生産管理が最も優先すべきことは
「お客様に迷惑をかけない」
これに尽きます。
台風が来ようと…
地震が起きようと…
ウイルスが蔓延しようと….
納期通りにお客さん(得意先)へモノを届ける使命があります。
これは会社の規模や業界に関係なく、モノづくりをしているすべての会社・工場の生産管理マンが果たすべき責任です。
しかし、そうは言っても、不可能なことも当然あります。
工場の設備や製品が損傷し、どうやっても復旧までに時間が必要な場合はあり得ます。その際には、正確な情報と今後の対応について、関係各所へ可及的速やかに発信することが大切です。
“バッドニュース・ファースト”
という言葉があります。
これは生産現場に限らず、多くのビジネスマンが聞いたことのある言葉かもしれませんが、「悪い・不利・不利益な情報ほど素早く発信するべきだ」という意味です。
モノが作れない、得意先へ納めることができない、といった状況になった際には、生産管理が状況を整理し、社内の関係部署や仕入先、得意先へすばやくアナウンスをするのです。
遅くなればなるほど火は大きくなってしまうケースが多く、ボヤのうちに助けを乞うことが重要です。
設備の修理が必要なら保全や工機部門、災害により出勤できない人が多い場合には代わりの人を人事部門に手配してもらう。あるいは他部署からヘルプしてもらう。どうにも社内で挽回ができそうもない場合には、他社にバックアップをしてもらう。
などなど、あらゆる手段を考え、得意先へ迷惑をかけないためにはどうすべきかを瞬時に正確に判断し、傷口が広がる前に手を打つために生産管理が存在しているのです。
生産管理は具体的に何をやるのか
天災等のパターン、生産管理の使命が分かったところで、実際に起きた場合に何をすればよいのかを整理していきます。地震や台風が起きた場合、最低限抑えるポイントは
- 自社の対象の製品(商品)、部品、材料はどれか整理し、把握する(範囲の把握)
- 最悪の場合を想定し、どこまで在庫がつながるのか調査する。(程度の把握)
- 対策やバックアップ案の検討(対応の検討)
例えば、地震や台風によって自社の生産ライン設備が故障した場合には、状況を整理する必要があります。影響範囲を特定するのです。その生産ラインに関連する製品は何か。どの得意先へ納入しているのか。といった具合です。
一つトラブル源が見つかるとそればかりに目を奪われがちですが、
・”自社の他の生産ラインは大丈夫なのか”
・”仕入先の被害は大丈夫なのか、部品供給はストップしないか”
・”流通/物流ルートは遮断されていないだろうか”
などと、あらゆる方面へ気を配り、正確に情報を掴むことが大切です。
一つのことに対処していたら、知らないところで大きな火が上がっていた、なんてことにはならないようにすべきです。
範囲が特定できたら、”影響の程度”を把握します。
故障した設備はすぐに復旧できるのか、できない場合、どの程度の時間が必要なのか。
専門家である保全や工機部門などと協力をしながら、どのくらい深刻なのかを掴みます。
影響の程度がつかめたら、今度はだれが・何をすべきかを明確にしていきます。
復旧と同時に代替ラインを用意をする。得意先へ状況の連絡をする。復旧状況や関係各所の進捗をフォローする。問題の解消を迎えるまで指揮をとる。
このように生産管理が中心となり、問題把握と解決へのスケジューリングをしていくことが一般的な流れになるはずです。
天災やトラブル発生時、生産管理がやるべきことは正確な状況把握と情報の共有化です。
何が起きて、何が問題で、何をすべきかを明確にし、関係者と連携をとることで会社への不利益を最小限にしていきましょう。
今回紹介したのはトラブルの中のほんの一例になります。
コレをしておけば大丈夫だ、とルール化できるケースは少なく、多くの場合、臨機応変な対応が求められます。
しかし、いかなる場合であっても大事なことは
“得意先 第一!”
これを軸に動くことができれば迷うことなく、やるべきことが見えてくるのではないでしょうか。
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