今回は”棚卸(たなおろし)”について紹介していきます。
棚卸という言葉や仕事内容について、みなさんどれほど理解があるでしょうか。
といった疑問に答える内容になっています。
私みたいに製造業で働く人間にとっては非常に高い頻度で使用する用語ではあります。あまり縁のない人からすると「何ソレ?」という感じだと思います。
私自身も、会社経営的・経理的意味の棚卸についてはあまり詳しくありませんので、今回は、生産管理としての棚卸との関わり方について紹介していきます。
棚卸って何?
まず棚卸の一番の目的は何でしょうか?
それは
と言えるでしょう。
棚卸の実施時期は企業によって異なりますが、基本的には年度末でしょう。
年度末に会社の資産がどれだけあるのかを正確に把握するために棚卸を行います。
会社内にある資産、生産している製品在庫は当然ですが、部品や材料、作りかけの仕掛品なども、何が・いくつ・どこにあるのかを明確にすることが棚卸です。
網羅性と正確性が求められます。
会社にある在庫は原価として扱われ、会社の売り上げから在庫などの原価を差し引いて収益を算出するのです。
売上原価=期首棚卸高+仕入高-期末棚卸高
そのため年度末に行い、今年度の会社の原価や売り上げなどの収益状況を加味し、経営状況の把握をするのです。
会社にとって、資産がどれだけあるのかを把握する手段として棚卸が不可欠なのです。
当然、この話は製造業に限った話ではなく、スーパーやコンビニ、アパレルなどの小売業にとっても棚卸は最重要イベントと言えます。
店舗の在庫状況を把握し、キャッシュフローを見直す機会にもなりますし、万引きなどの異常検知にも役に立ちます。
帳簿上(計算上)の在庫と、実棚(実物の在庫調査)による在庫の差異を確認するという意味もあるのです。
棚卸とは、このように、会社が何をどれだけ資産として抱えているのかを把握するために、現物の数量を確認する行事なのです。
生産管理が行う棚卸の目的は?
会社にとっての棚卸の意義を紹介しました。
ここからは生産管理にとっての棚卸について説明していきます。
まず、生産管理にとっての棚卸の最大の目的は
正確な在庫状況の把握
であると言えます。
在庫と一言で言っても、工場内には様々な在庫が存在します。
- 完成品在庫
- 仕掛品在庫(生産途中のモノ)
- 部品・材料在庫
- 社外倉庫在庫
- 長期滞留品在庫
- 死蔵品在庫
ざっと挙げただけでもこれだけあります。
どこに・どれだけ・何があるのかを明確に把握します。
在庫管理をしている生産管理にとって棚卸は在庫を正確に知ることのできる重大イベントなのです。
正確に在庫状況を把握することは、以下のような良いことがあります。
生産管理の在庫管理の方法は会社によって異なるかもしれませんが、基本的には棚卸を起点に在庫数を把握しているケースが多いはずです。
【在庫の算出方法(例)】
棚卸:100個
棚卸~現在:30個 使用
棚卸~現在:20個 購入
現在の在庫: 100-30+20 = 90個
といった具合に、棚卸を起点に使った数と買った数を差し引きした数字を在庫として考えて管理している会社が多いです。
そのため、棚卸を実施することで在庫数が再計算(リセット)されますので、より精度の高い在庫を知ることができ、管理がしやすい状況になります。
さらに良い点として、在庫管理における問題点が明らかになります。
例えば、画面上の在庫と実際の在庫数量が大きく異なる場合には、何かしらの異常があり、正しく在庫が管理できていない可能性が考えられます。
管理方法を見直す必要があるでしょう。
他には、長期滞留している在庫や古すぎて使用不可の在庫を明らかにすることで、ムダの顕在化も可能です。
このように在庫情報を正確に把握することは、様々なメリットがあるのです。
会社にとっては資産管理をすることが目的かもしれませんが、生産管理にとって棚卸とは日ごろの膿出しや在庫の見直す絶好の機会になるのです。

生産管理が行う棚卸の方法について
今度は、具体的な棚卸方法について紹介していきます。
棚卸は前述の通り、会社にある在庫を正確に把握することが大切です。
そのため、生産ラインをすべて停止させることが多いです。
モノを造ったり移動させたりしている中、正確な数量を数えることはできません。
モノの生産と移動はすべて停止させた状態で、数量を数えていきます。
当然、ダブってカウントしたり、カウント忘れの内容に厳しくチェックしながらやっていく必要があります。
細かい部分になりますが、必ず第3者による監査をしながら、隠蔽などができないような仕組みづくりや記録表を用意しながら不正のないように進めていくことが義務付けられています。
工場内のすべての在庫をカウントするわけですからとてつもない工数が必要です。
最近ではIoTやQRコード、RFIDタグなどを活用して効率的に正確に棚卸をする工夫も求められてきています。
定期的に行うことですので、できるだけ効率化してムダのない棚卸を目指していく姿勢も大切になってきます。
最後に
今回は棚卸について紹介してきました。
細かい部分を入れると非常に複雑で、面倒なイベントですが、会社にとっても生産管理にとっても非常に大切な部分です。
理解を深めて、より良い棚卸をできる生産管理マンを目指していきましょう!